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ミニカーは実車の縮小ではない from 山中俊治の「デザインの骨格」

ミニカーは実車の縮小ではない - 山中俊治の「デザインの骨格」

乗用車のミニカーは、実物の単なる縮尺ではないのをご存知でしょうか。クルマの設計製造に使われるボディの三次元データを使って、例えば1/43とかに縮小して精密加工でモデルを作れば、完全なミニカーができるはずです。ところがそのようにして作られたモデルを実際に見てみると、ちっともらしく見えないのです。

実際にカーデザインの現場で、正確なスケールモデルを何度か見たことがありますが、その印象は一言で言うと、ぺらぺら。実物を見ると抑揚の強いスポーツカーのボディも、縮小するにつれて、フラットな四角いクルマに見えてきます。

人間の認識というのは面白いなぁ、と思う。

これと似た話として、現実の物理現象速度を再現してしまうと、違和感のあるアニメになってしまう というがある。

木に積もった雪がドスンと落ちる様子や、温泉の湯気が立ち上るようすを実際に撮影し、それをコンピュータ・グラフィクスでアニメーションにしてみると、今一つ感覚と違うという。現実の物理現象速度を再現してしまうと、違和感のあるアニメになってしまうというのである。

 現実の速度と同じ湯気では「湯気の動きが早すぎて、寒く感じてしまう」し、現実と同じ速度でドスンと落ちる雪は「遅すぎて、(登場人物が)驚くような感じにはできない」というのだ。つまり、現実とアニメの中での「速度感覚」というものは、何かしら異なっている、という。(自然とは異なる)非等時的なデフォルメがなければ、「自然なアニメーション」にはならない、というのである。

たしかに、Youtubeとかに上がっている物理シミュレーションのCGを見てみると、全体的に動きが遅いように感じる。

つまり、おおざっぱに言ってしまえば、人工的に作成されたCG映像を見ているという一種の「フィルター」を通して、情報が失われている(あるいは、余計な情報が増えている)ということだ。ちょっと考えてみると面白い。

自分が思いつく中で一番面白そうな解釈はというと、このような、ある種の「フィルタ」を使うことによって、情報処理のコストを削減する「圧縮技術」になっているという可能性かな。そうすると、動画や画像を圧縮するときにも、均等に圧縮するのではなくて、印象が強いところを鮮明に残し、どうでもいいところに高圧縮率をかけるような処理ができるのかなぁ、と。

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