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流体力学の勉強(2) :「流体の力学入門」読書メモ(1)

流体力学の勉強の続き.演習で学ぶ「流体の力学」入門 第2版 という本を勉強中.いろいろ飛ばして12章から.

この章では,流体の基礎方程式と,そのためのいくつかの概念の導入(物質微分,オイラーの方法,ラグランジュの方法など)がされています.

冒頭でラグランジュの方法とオイラーの方法が説明され,やや天下り的に実質微分(もしくは物質部分またはラグランジュ微分)が導入されていますが・・・

 \displaystyle
\alpha_x =  \frac{Du}{Dt} =  \frac{Du}{Dt}  + u \frac{\partial u}{\partial t}  + v \frac{\partial u}{\partial t}

初心者としては非常に混乱しました.「オイラーの方法では」と書かれていますが,この書き方が謎でした.なぜなら,直前で説明されている「オイラーの方法」とは「任意の時間において,空間のすべての点に対して流体粒子の持つ速度,圧力,密度,温度などの物理量を考え,流れの状態を観察する方法」と書かれているにもかかわらず,「空間上の点を固定して観察しているのに,なんでxとyで偏微分するのか?」という点が疑問でした.

ラグランジュ微分 - EMANの流体力学 を読んで,やっとこの意味がわかりました.

まず,単に「ラグランジュの方法」とか「オイラーの方法」といっても,「ラグランジュ/オイラー的な考え方」と,「ラグランジュ/オイラーの表記」の2つの意味があって,物質微分はいわば「ラグランジュ的考え方のオイラー表記」ということですね.

さらに,式自体の導出が省略されているので,練習がてら導出してみます.

ある物理量Aの物質微分を求める.x成分について本文 図12.1 の記号を使って,  \Delta t 後の位置と速度を考え,

 \displaystyle
A' = A(x_0 + v_x \Delta t, y_0 \Delta t, z_0 + v_z \Delta t)

1次までのテイラー展開して,

 \displaystyle
A' \approx \frac{\partial A}{\partial x} v_x \Delta t + \frac{\partial A}{\partial y} v_y \Delta t \frac{\partial A}{\partial z} v_z \Delta t + A(x_0, y_0, z_0)

よって,

 \displaystyle
A' - A = \frac{\partial A}{\partial x} v_x \Delta t + \frac{\partial A}{\partial y}v_y \Delta t + \frac{\partial A}{\partial z} v_z \Delta t

 

 \displaystyle
\frac{A' - A}{\Delta t} = \frac{\partial A}{\partial x} v_x + \frac{\partial A}{\partial y}v_y + \frac{\partial A}{\partial z} v_z

よって

 \displaystyle
\frac{D}{Dt} = \frac{\partial}{\partial t} + \nabla \cdot v

(この本,演習問題が充実していて難易度的にもちょうどよいのですが,全体的に天下り的な説明や目的のよくわからない概念の説明が多いので,周辺を自力で調べながら進む必要がありそう.

演習で学ぶ「流体の力学」入門 第2版

演習で学ぶ「流体の力学」入門 第2版

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