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[雑記] 『アバター』の感想(ネタバレ) ターミネーター的未来観からパンドラ的未来観へ

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star3Dのためだけにある映画。眠いわ〜
starたっぷり楽しめます。
star娯楽映画に込められた西洋文明批判

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2週間くらい前に映画『アバター』を観ました。

結論から先に書いてしまうと、この映画はキャメロン監督の「未来観を転換しようぜ」というメッセージが込められた作品だと思いました。


たぶん、大部分の人の感想は、

前評判どおり、筋は単純だね。『ダンス・ウィズ・ウルブズ』と『もののけ姫』みたいな感じ。

でも3Dすごかったからまぁいいか!

てな感じではないでしょうか。あるいは、インターネットを検索すると、反戦映画だとか欧米の植民地政策を批判したものだとか、いろいろありますね。たぶん、知識豊富な方々が書かれていて、それらはそれなりに妥当だと思います。でも、一応情報科学系の学生である自分としては自分なりの方向での解釈を試みたいと思います。

まさに地球人の舞台が森に総攻撃をかけようとする寸前にシガニー・ウィーバーが「この木たちは根で情報をやりとりしているのよ!」みたいな台詞(詳細忘れた)を言ってましたね。でも、映画的には伏線にもなってないし、イマイチ浮いた台詞だなぁと思ってました。

でも、考えてみれば、これってすごく重要な台詞です。パンドラの森が大きなコンピューターであるっていうことを意味しているってことだし。


最近のHPC(High Performance Computing)の大きなトピックは、電力とハードウェアの故障対策なんですよね。

データセンターやスパコンにとって電力が大きな問題になることは言わずもがな。故障率についても同様。数年後に実現するペタフロップス級のスパコンや、数十年内にはできるであろうエクサフロップス級スパコンでは、あるいは大規模クラウドでは、ノード数が増えれば増えるほど平均故障時間も短くなることになります。下手をすれば秒単位であちこちが壊れていく。

将来的には、グリーンなエネルギーで動く、自律的に自己修復できる設備が必要になるんですよね。それって何でしょうか。

数百年のスパンで見れば、それって植物だと思うんですよね。木にコンピューターを組み込むとか。生物の授業は全部忘れたのでそんなことが可能なのかは知りませんが。

そうすると、惑星パンドラは過去の地球ではなく、未来の地球なんですね。

ここで、新しい「未来観」が提示されているわけです。硬い物質で構成された無機物と機械の未来から、自然と調和する有機物と情報の未来へ。

そう考えると、面白いくらい無敵モードで登場する「大佐」の存在もわかってきます。彼は、まさにキャメロン監督自身が描いた「ターミネーター的未来観」の象徴なんですね。無機物で身体を構築することによって「肉体の不死」を目指したターミネーターから、物理的な身体の死を受け入れて「情報の不死」を目指すパンドラ人へと。

ターミネーター的未来観から、パンドラ的未来観へ。

監督自身の未来観の転回なのかなぁと。

戯言でした。

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